『スピード』
[Speed] (1994)
―― “野暮なことは言いっこナシで” ――
タイトル通りのスピード感。監督ヤン・デ・ボンの演出力に脱帽の一編。バス爆弾の猛烈爆走ムービー。文字で表
せばそんな映画だ。
“時速50キロを下回ったら…爆発するぞ!”――怪優デニス・ホッパーの怪気炎。元警官の、燃えたぎる体制への
復讐心が、罪無き乗客を恐怖のどん底に叩き込む。アメリカという軍事大国が孕む、病んだ一面が垣間見える。CI
Aを憎む輩が、この国には何と多いことか。クリント・イーストウッドが、老体にムチ打ち、財務省SSに扮した 『シー
クレット・サービス』 もそうだった。大統領暗殺を企てる犯人――ジョン・マルコビッチ――も、元CIAのエージェン
トである。国家への憎悪。体制への私的復讐。映画の題材としては、最高にドラマチックなのかも知れない。
さてさて、デニス・ホッパーという最高の悪役を得た 『スピード』 。バス爆弾を阻止しようと果敢に立ち向かうL.A.P.D
の正義の警官に、坊主頭も凛々しいキアヌ・リーブスが挑む。ハリウッドではゲイの噂もある彼。この映画では、勇
猛果敢な警官姿がよく似合う。
50キロを下回るな!…など、首都高速では初めから無理な注文であるが、さすがアメリカのハイウェイは懐が深
い。サンドラ・ブロック演じる免停ねーちゃんの見事なハンドルさばきで一般道路へ進入するとなれば、もはや日本
の道路事情では助かる見込みはゼロだろう。
それはそうと、いちばんの目玉シーン――暴走バスの大ジャンプは、本当に可能なのか?まぁまぁそんな野暮なこ
とは言いっこナシで…。「空想科学…」 シリーズをひもとけば、ひょっとしたら解明されている可能性もなきにしもあ
らず…。そもそも、映画は虚構の世界。嘘っこを嘘として楽しめる貴重な娯楽なのだから。映画のクライマックス、デ
ニス・ホッパーの首がすっ飛び、暴走地下鉄がリーブスとブロックを乗せたまま地上に噴出(?)する。あり得るの
か?まぁ、野暮なことは言いっこナシで…。
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